たまたま見ていた11月28日の報道特集NEXT。

日本の裁判員制度に重ねて、陪審員制度の不安定さを強調して、テキサス州のある死刑執行を取り上げていた。死刑に処されたのは黒人のRobert Thompson。強盗に押し入った先の店員の首に突きつけた銃は・・・弾切れ。しかし、強盗共犯者が別の店員を撃ち殺してしまった・・・という事件。

死刑の前日、「恩赦仮釈放委員会」はテキサス州知事に対し、Thompsonの減刑を提案していたのよね。その提案を退け、知事が死刑執行を決定したのは、執行予定時間である18時の30分前だったんだって。詳細はTexas Information Centerのウェブサイトで。私による日本語略訳だけど、最後の方にのっけてます。

番組では陪審員制度に疑問を投げかけていたけど・・・彼は陪審員に裁かれたのではなく、その土地に裁かれたようなもんなんだと思う。結局は減刑の提案があったにもかかわらず、知事の一声で死刑は執行されるのだから。人間は、取り巻く環境に左右されるものだけれど、それを理解した上で生きていかなきゃならない。ただし、その環境は、その中の人間達によって良くも悪くも変化する・・・が、人はそれに気づいていてもなかなか行動は出来ずに、多数決の「多」へ傾いていく。保守派が多い地域のトップときたら、余計に「多」を好むんだろうね。

もちろん、死刑となってしまった彼の生き方が正しかったとは言わない。他に凶悪犯罪を犯していたようだし。ただ、自分たちの土地に押し寄せてくる異国人達に、「まぁ、頑張れや。一杯飲もうや。」と上から目線でもいいから、百歩譲って歩み寄ったろか~という意識がちょっとでもあったなら、悲劇が始まることはなかったのかもしれない。どうしても「おまえら、入って来やがって。俺らのコミュニティーにカネ落としていかへんねんやったら、取り返すまでや。」となってしまうんだろうか。入ってくる異国人達は、そんなに悪いヤツらなんだろうか・・・。

アメリカンブラック達がこの数百年の間に受けてきた仕打ちは、もっと残酷なものだっただろう。でも同じ事をして仕返しするのは「奴らと同じ」ということを証明しているようなものだと思うのよ。彼らの能力とスピリットをもっともっと違うものにぶつけて、明るく強く、命のある未来を手に入れて欲しいんだよね。「おまえらにかまってるヒマなんてねーんだよ。」くらいに思って欲しい・・・と切に願います。

ちょっと気にかかったこと。
報道特集の報道ではThompsonは前科もなくこの事件だけを起こした人で、弾切れで人を殺すことがなかったが、”明らかに殺意があった”ととられてしまったのに死刑になった「不運な人」だと取りかねない描き方をしていたのは、ちょっと誤解を招くんではないかしら? 委員会の減刑の提案があっても知事のサジ加減で刑が決まるということに、(できればその背景もリサーチしつつ)焦点を当てて欲しかったなぁ。

2009年11月30日 掲載

Texas Ececution Information Center: Robert Lee Thompson

【略訳 by naoh】

2009年11月19日テキサス州のHuntsvilleで、強盗殺人罪に問われたRobert Lee Thompsonは薬物注射により死刑に処された。

1996年12月5日、Thompson(当時21歳)とSammy Butler(当時19歳)はHoustonのコンビニエンスストアに強盗に押し入った。Thompsonはカウンターにいた店員のMubarakali Merediaにピストルを突きつけ、レジの中の金を渡すように指示。もたついていたMerediaの腹部を撃ち、そこへ駆けつけようとした従業員のMansor Rahim(Merediaのいとこ)へ発砲した。ButlerもRahimへ発砲し、店にいた数人の客を脅した。

Thompsonは再度、床に倒れ込んでいたMerediaへ3発発砲し、レジの金を自分の元へ持ってくるように指示。Merediaはその通りにした。その後、ThompsonはMerediaの首に銃を突きつけ引き金を引いたが、弾が切れており発砲しなかった。そこでThompsonは銃やレジの引き出しでMerediaを叩いたりした後、奪った金を持ち、走って店を出た。一方、Butlerは宝くじの束を奪い、Thompsonの後に続いて店を出た。Thompsonは運転席、Butlerは助手席に飛び乗った。Rahimが彼らを追いかけて走ってきたところを、店のガラス扉越しに2発発砲した。そのうちの1発が彼の胸部に命中し、Rahimは死亡。Merediaは生きながらえた。

逮捕後、Thompsonの供述によると、2ヶ月ほどの間、犯罪ばかりしていたようだ。Rahimが射殺されたコンビニ強盗事件が起こるまでの24時間以内にも他に2つの強盗殺人を犯し、人を撃ったことを自供した。

テキサス州には「実行犯でなくても犯行集団の一員は同じように罪に問われる」といった”law of parties”が存在する。

Thompsonは、強盗や店主殺害を始めた理由こう説明している・・・「あいつら(日本人、中国人、ベトナム人や中東人などのこと)は俺達の国へやってきた。あいつらは人のコミュニティに勝手に入ってきておきながら、俺達らからカネを奪ってばかりで俺達に還元しようとはしない。俺らがあいつらの店に入ったら、”こいつら黒人だから、何か盗むんじゃないか?”なんて風に後をつけてきやがる。俺達のカネが奴らのもんになってるなんて、いい気しないだろ? 俺達は仕方がないから彼らの店へ行く・・・ここにあるんだから。(ここのカネは俺達のもんだから)奴らの金を奪ってるわけじゃない。勝手に人のコミュニティに入ってきといて、俺達を人間扱いしないからさ。ニュースでよく見る通り、黒人に対するイメージってのは、だいたい、強盗犯や人殺し。誰がそれを「間違ったイメージだ」なんて言うことができる? たまたまやったのが俺なだけで、いずれ誰かがやったんだろうよ。」

Thompsonは1998年3月、陪審員の評決で第一級殺人として有罪とされ、死刑の宣告を受けた。テキサス州控訴裁判所は2003年、有罪評決と死刑宣告を支持。Thompsonの州や連邦への控訴は棄却された。

一方、Samuel Lee Butlerは3件の第一級殺人と1件の悪質な強盗で有罪とされ、終身刑が言い渡され、現在も拘留中である。

Thompsonの死刑執行日の前日、テキサス州の恩赦仮釈放委員会はRick Perry知事に死刑から終身刑への減刑を提案。Rick Perry知事の在職期間9年間のうち、このような提案はたった3回しかない。

恩赦仮釈放委員会の提案無しには知事が減刑や恩赦を決定することができないが、必ずしも知事が委員会の意見に添う必要はない。2004年、委員会が心神能力を理由に恩赦を求めたというKelsey Pattersonのケースでは、Perry知事は恩赦を却下し、Pattersonは処刑された。

Perry知事は2007年、Thompsonと同じように「集団の一員」としての罪で死刑を宣告されいていたKenneth Fosterのケースでは恩赦を認めた。その理由は共犯者が同時に裁判にかけられているからという理由であった。

Thompsonは共犯者のButlerとは別に裁判にかけられていた。

Perry知事はThompsonの処刑の朝、書面でこう語った。「Robert Lee Thompsonには繰り返し悪質で凶悪な経歴とRahimを殺害したコンビニ襲撃の一件があるので、陪審員の評決の通り、彼を第一級殺人の罪で有罪とし、死刑に処することとした。」

刑務所の中でイスラム教へ改宗したThompsonの最後の言葉で、アラーへの賛美と母親と友人達への愛を述べた。彼は、誰もいない傍聴席に向かって、自分の犯した罪を詫びた・・・「私はあなたたちの家族を傷つけるつもりはなかったんです。アラーは私を許してくれるでしょう。」Thompsonが話している間、彼の母親のAudrey Champsは踏みしめながら「あぁ、神よ、神よ・・・」とすすり泣いていた。彼女が立会部屋へ案内された後、薬物注射の注入が始まった。6時19分に彼は亡くなった。

(追記:12月8日)
12月3日、また同じHuntsvilleで、元彼女の妹である11歳の女児を拉致し殺害したとされるBobby Woodsの死刑が執行された。彼には前科はなく、知的障害の疑いもあったとされている。